きょうはシドニー郊外のブラックマウンテンにあるベースボール・スタジアムへ野球の日本代表チームの取材だ。松坂大輔らプロ選手は翌日の到着だが、アマ選手がこの日の早朝にシドニー入りし、午後3時から調整練習をする。

 これが、また遠い。そもそも、オリンピックのメーン会場からしてシドニーの中心街から直線距離で15kmも郊外にある。オリンピックのメーン会場といえば、その都市のド真ん中にあるものだとばかり思っていた。事実、バルセロナもアトランタもそうだった。しかし、シドニーは違う。

 記者村がそこからバスで10分だから、陸上や体操を取材する分には問題ないが、市の中心部で行う柔道やレスリングの会場へ行く時は、“遠出”しなければならない。野球の会場は、ひとつはメーン会場のそばにあるが、もうひとつはそこから25kmも奥まった郊外にあり、きょうはそちらまで行かねばならない。記者村から最寄の駅までバスで10分。電車(写真右)に乗り約30分かけてドーンサイドという駅まで行き、さらにバスで5分。待ち時間を入れて片道1時間30分の“遠距離通勤”だ。

 早くから来ている記者の話だと、バスは時刻通りには運行できていないし、鉄道は時たま止まるという。今ですらこうだから、観客が繰り出す競技開始後はどうなることかと心配だ。

 野球場(写真左)では、真夏を思わせるような日差しに照りつけられる。気温は30度くらいはいっているのではないか? とにかく暑く、のどが渇く。乾燥しているだけあって、投手は「ボールが滑るみたいで、投げづらい」と口をそろえる。投手コーチによると、小雨の時が最も指がボールに引っかかり、いい球を投げられるのだそうだ。乾いていると、ボールがうまく縫い目に引っかからないだろうから、カーブなんかうまく曲がらないかも。

 一方で打者は、「打球が思ったよりも飛ぶ」と言う。乾いて湿り気の全くないボールの方がスピードがつくのは当然。打者が有利となりそうな環境だ。そうこうしているうちに、隣の球場から外野フェンスを越えてボールがズドン、ズドン、と何発もやってきて、うち一発がテレビ大阪のスタッフに命中。豪州チームが打撃練習しており、オーバーフェンスのボールだ。練習を終えた選手たちは「こりゃ、たまらん」と避難。気候の問題だけではなく、豪州チームの猛打を実感。

 その後、Tスポーツ新聞のM・W記者ほかの車に同乗させてもらい、メーン会場そばの球場で練習している米国チームの取材へ回った。有名なラ・ソーダ監督率いるチームで、日本の初戦の相手。ここもプロのチームだが、日本が高級ホテル住まいであるのに対し、こちらのプロは4人1部屋の選手村生活。

 同じ米国のバスケットボールチーム(ドリーム・チーム)も高級ホテルに宿泊している。もっとも野球の場合、プロとはいえ3A(大リーグのひとつ下のリーグ)の選手だけに、そこまでの待遇はしてもらえないのだろう。米国チームの広報担当は「3Aは移動続きで試合をし、そこで結果を出さなければならない。悪い環境だから、力を出せない選手なんて、ここにはいない」ときっぱり。さらに「いろんな国の選手と交わり、いろんな競技の選手と交流することも、オリンピックの精神」と言い、選手も不便を感じておらず、けっこう楽しんでいると説明する。

 オリンピックの精神を捨てて、勝ちに行った日本。結果が出ればいいが、出ない時は「実力もない選手を甘やかすからだ」となるのは間違いないだろう。

 さて、この日は夜になってもジャンパーの必要はないほど暖かかった。外にいたので、顔がヒリヒリ。これはいかん、と思って日焼け止めのクリームを買い、明日からの取材に備えることにした。熱い闘いの開幕は、いよいよ24時間後だ。(続く)

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