女子マラソンは朝9時スタートと早い。その時間までにはメーン会場へ行って、テレビでレースを見るつもりだったが、ちょっぴり遅れる。日曜日ということもあって、メーン会場は満員に近い。あちらこちらに日の丸の旗が振られている。やはり高橋尚子への期待は高い。

 その高橋は途中からトップを走り、終盤へ。場内のオーロラビジョンに競技場が近いことをうかがわせる映像が流れると、あちらこちらから歓声が上がり、日の丸が振られる。2位を走る選手とは100mも差がない様子。追い上げで有名な選手だけに予断を許さないムードが漂う。

 それでもトップでゲートをくぐってきた時は、もう大丈夫だろうと思った。2位の選手も入ってきて、確かに少しずつ差は縮まっているようだが、あと1周は持ちこたえそう。歓声につつまれてゴールイン(写真右)。さわやかな笑顔の子だ(写真下)。
印象的だったのは、「3500mの高地でのトレーニングが死ぬほどハードで、それに比べれば楽だった」という言葉。金メダルを取るには、血ヘドを吐くくらい練習しなければならないのだ。

 あとでこの言葉を高田裕司監督と土方政和コーチに話し、「セルゲイの言っていること(全日本でハードなトレーニングは必要なく、技術を高める練習をするべきだ、という主張)は、必ずしも正しくないのですかね?」と聞いたら、「いや、セルゲイ(らロシア選手)もすごい練習をしているんだよ」と土方コーチ。日本選手は所属で必死の練習ができていないから、全日本で鍛えなければならないという。高田監督は「女子の場合は、コーチが一体になって鍛え、信者にして猛練習についてこさせることが必要なんだ」と言う。

 高橋をマンツーマンで育てたのは、積水化学の小出監督。「高橋が頑張っているのに、自分が飲んだくれているわけにはいかない」と、ここ2週間は好きなビールをやめて大会に臨んだそうだがという。この言葉を聞いて思い出したのは、アニマル浜口さんがアテネ五輪で京子選手に金メダルを取らせるた、同様の理由で4年間の禁酒に入ったこと。4年間は長すぎるから「ビールは酒ではない」と言い出しても目をつぶるが、そうした指導者の姿勢も大事だと思った。

 日本オリンピック委員会(JOC)の中間記者会見に出たあと、レスリング会場へ向かう。元木康年、片山貴光とも負けたという情報が入っており、ちょっぴり残念。4時からグレコローマンの新たな4階級の計量。アレクサンダー・カレリンがいたので、近づいて写真を撮ると(写真右)、こちらに気がついてニッコリ。前田VSカレリンや今年4月の欧州選手権(モスクワ)取材で、顔は覚えてくれている。政治家は人の顔を覚える能力はある。

 そのカレリンは、何と今年の欧州2、3位の選手と同じブロックを引いた。すなわち欧州の1〜3位が同ブロック。シード制を採用せず「運も実力のうち」を地でいくスポーツのレスリングらしい組み合わせだ。笹本睦は1階級下とはいえアトランタ五輪王者と同ブロックとやや分が悪そう。永田克彦はチャンスだ。

 試合では片山、元木とも少しでも上の順位を目指し、気力を振り絞って戦ったが無念の敗戦。元木はマットを降りた時から泣きじゃくり、声をかけづらい。しかし、しっかりと応対してくれる。2人ともご苦労さま。

 そのあと朝日新聞の柔道担当記者、バウトレビューの変わった女性記者とともにチャイナタウンへ食事へ。会場で別れたばかりの三宅靖志(アトランタ五輪代表、米国から応援)、大橋正教(綜合警備保障、バルセロナ五輪代表)、鈴木賢一(バルセロナ・アトランタ五輪代表)、近藤務(自衛隊)とばったり。食事後、バウトレビュー記者を4人に預けて自分と朝日の記者はプレスセンターへ戻る。大変だ、まだ原稿を書き終えてない!(続く) 

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