【特集】名勝負数え歌! ライバル対決に勝つのはどちらか(4)
男子グレコローマン74kg級 鶴巻宰(自衛隊) − 金久保武大(マイスポーツ)


【2010年12月10日】



 追う立場だった選手が、いつの間にか追われる立場になってしまうのは勝負の世界の常。若手成長株として期待されていた鶴巻宰(自衛隊=左写真)はライバルを蹴散らして2007年の世界選手権の代表へ。ロシア選手を破る実力を見せた。

 2008年北京五輪出場はならなかったものの、ライバルが第一線を退いてくれたことにより、2012年ロンドン五輪へ向けて“独走”できるかと思われた。立ちはだかったのが、柔道から転向し、レスリング歴4年に満たなかった金久保武大(当時日体大=
右写真)。2008年全日本選手権で鶴巻を追い詰め、翌年6月の全日本選抜選手権で打倒鶴巻を果たした。

 プレーオフで敗れて世界選手権出場はならなかったものの、チームの出場停止処分による半年のブランクにもかかわらず、翌年の全日本選抜選手権でも鶴巻を撃破。この時も再びプレーオフで敗れてしまったが、実力伯仲を証明してみせた。

 金久保は、鶴巻が負傷で辞退した世界選手権に初出場して5位入賞。前年の世界選手権で北京五輪王者を破っている鶴巻は、アジア大会で銀メダルを獲得。両者とも世界のトップレベルの実力を証明した。7度目の対決は、1ポイントを争う激戦となることは必至。6分間の死闘の末に手が上がるのは?(男子グレコローマン74kg級は12月23日)




2010年世界選手権代表をかけたプレーオフ。第3ピリオド、金久保(青)はこん身の力を振り絞ってリフトを狙ったが、持ち上げられずに無念の敗北。(撮影=矢吹建夫)
 =両者の対戦成績=

 《2010年》
【5月:世界選手権代表決定PO】鶴巻宰(自衛隊)○[2−1(2-0,0-1,3-0)]●金久保武大(マイスポーツハウス)
【5月:全日本選抜選手権】   金久保武大(マイスポーツハウス)○[2−1(1-0,0-1,3-0)]●鶴巻宰(自衛隊)
 《2009年》
【6月:世界選手権代表決定PO】 鶴巻宰(自衛隊)○[2−0(4-0,3-0)]●金久保武大(日体大大学院)
【6月:全日本選抜選手権】    金久保武大(日体大大学院)○[2−1(4-1,0-2,1-0)]●鶴巻宰(自衛隊)
【2月:ニコラ・ペトロフ国際大会】鶴巻宰(自衛隊)○[2−1(0-1,1-0,1-0)]金久保武大(日体大) 
 《2008年》
【12月:全日本選手権】鶴巻宰(自衛隊)○[2−1(3-3L,3-0,1L-1)]●金久保武大(日体大)

鶴巻宰(つるまき・つかさ)=自衛隊
 1984年5月19日、山形県生まれ、26歳。山形・米沢工高〜国士大卒。高校時代の2002年に全国高校生グレコローマン選手権と国体で優勝し、全日本選手権4位へ。国士大へ進み、2003年は全日本大学グレコローマン選手権の1年生王者へ。2004年は2階級にまたがって学生二冠(全日本学生選手権、全日本大学グレコ選手権)を制し、全日本選手権で優勝。
 2005年にアジア選手権3位、ユニバーシアード3位など国際舞台で結果を出し、20007年に世界選手権に初出場。しかし2008年北京五輪は出場できず。2009年は世界選手権に出場して北京五輪王者を破るも、上位入賞はならず。2010年はアジア大会2位。181cm。
金久保武大(かなくぼ・たけひろ)
          =マイスポーツハウス

 1986年7月1日、神奈川県生まれ、24歳。東京・東海大付高輪台高〜日体大卒。高校時代は柔道の選手。2年生の2006年東日本学生春季新人戦で2位となり、翌2007年全日本学生選手権で3位と力を伸ばした。2008年の全日本学生選手権で優勝し、同年の全日本選手権に初出場して2位へ。
 2009年の全日本選抜選手権で優勝したものの、プレーオフに敗れて世界選手権出場を逃す。同年の後半は、チームの事情で大会出場ができなかったが、2010年の全日本選抜選手権で優勝。またしてもプレーオフで敗れた。その後、日本代表の鶴巻が負傷で世界選手権を辞退したため、繰上げ出場し、5位入賞。174cm。

 

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