【特集】北京五輪銀の輝きは復活するか?…男子フリースタイル55kg級・松永共広(ALSOK)
【2010年12月16日】


(文=増渕由気子)



 アジア選手権、世界選手権、アジア大会と今年の主要国際大会すべてでメダルを獲得した男子階級はフリースタイル55s級だ。アジア選手権では湯元進一(自衛隊)が優勝。世界選手権とアジア大会では稲葉泰弘(警視庁)が銅メダルを獲得。“第2の世界選手権”とも言われるゴールデンGP決勝大会でも湯元が優勝。日本お家芸の伝統を死守している。

 だが、全日本選手権では湯元VS稲葉の一騎打ちの構想は、まだ早い。2008年北京五輪銀の松永共広(ALSOK=
右写真)の存在は、誰にとっても脅威に違いない。

 松永は昨シーズン、長年の夢であったドイツのブンデスリーガに参戦。約半年に渡って毎週のように試合をこなした
(左写真=ブンデスリーガで闘う松永)。日本に復帰し、今年5月の全日本選抜選手権は3位に終わったが、北京五輪後初の国内復帰戦(55s級で)としてはまずまずの出来。

 五輪でメダル、そして海外プロリーグ参戦と2つの夢を成し遂げた松永。五輪の決勝で負けた悔しさが闘志に火をつけているのか、帰国後に選択した道は現役続行。そこで松永に芽生えてきたのが五輪選手としてのプライド。「下手な試合はしたくない」と全日本選手権に向けて、体をつくり上げてきた。

■宿敵D・マンスロフ(ウズベキスタン)の参戦も刺激材料

 五輪直後、一時的に休養はしたものの、昨シーズンは半年間も試合漬けの毎日を送った。それにより、「レスリングの感覚は問題ない」と自負している。むしろ全日本選抜選手権で見つかった課題は「北京五輪時の力に戻すこと」だった。

 キッズ時代から名を馳せてきた松永も6月に30歳を迎えた。2度目の五輪を目指すために、今何が必要なのか自分が一番分かっている。「自分のペースで調整したかった」と、今シーズンは全日本合宿に参加せずに、夏はカナダへ渡って練習を積んだ。ウェートトレーニングなどを多く取り入れ、「だいぶ(北京五輪時の力に)戻ってきた」と手ごたえをつかんでいる。

 この半年間、湯元や稲葉などが海外でも目に見える結果を残してきた
(右写真=日本での復帰戦で湯元進一に敗れる)。「日本のレベルが上がってきている。その中で勝ちたい」と松永の新たなモチベーションになっているようだ。

 海外に目を向けても、長年、松永の壁だったディルショド・マンスロフ(ウズベキスタン=世界V2)が60kg級から55kg級へ階級を戻し、11月のアジア大会で優勝。北京五輪で争ったライバルたちが2012年ロンドン五輪へ照準を合わせていることも松永に刺激を与えている。

 今大会への抱負は「優勝を目指します」とキッパリと即答してくれた。今年のアジア選手権金メダリスト、世界&アジア大会銅メダリスト、そして北京五輪銀メダリスト。一番の役者がそろった階級で松永が五輪銀の輝きを放てるか−。



 ◎松永共広の対湯元進一戦の成績
【2004年全日本選手権】○[2−0(TF6-0,TF7-0)]湯元進一(拓大)
【2005年全日本選手権】○[2−0(7-3,TF5-0=0:25)]湯元進一(拓大)
【2006年全日本選手権】○[2−1(0-3,3-0,1-0)]湯元進一(拓大)
【2007年全日本選手権】○[2−0(1-0=2:05,1-0)]湯元進一(自衛隊)
【2010年全日本選抜選手権】●[1−2(3-0,0-3,1-1C)]湯元進一(自衛隊)

 ◎松永共広の対稲葉泰弘戦の成績
【2005年全日本選抜選手権】○[2−0(1-0,5-0)]稲葉泰弘(専大)
【2005年全日本選手権】○[2−0(4-0,TF6-0=1:23)]稲葉泰弘(専大)

 

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