【全日本選手権・優勝選手】女子48kg級・坂本日登美(自衛隊)
【2010年12月23日】


(文=三次敏之、撮影=矢吹建夫)



 全日本選手権では48s級初挑戦となる坂本日登美(自衛隊)。昨年の全日本選手権では決勝で敗れた三村冬子(日大)。どちらが勝ってもこの階級で初優勝となる対戦となった女子最軽量級決戦は坂本が圧勝し、世界チャンピオンの地力を見せつけた。(右写真=タックルを決めた坂本)「準決勝まではマットに立つまで迷いとかがあって、勝負の世界の厳しさを知った思いです。(決勝戦は)吹っ切れたというか、あと1試合だということで思い切りでき、自信を持って臨むことができました」とコメントした。

 同級全体を見渡しても、優勝候補の最右翼はやはり世界チャンピオンの坂本ではあったが、初戦から準決勝までの3試合すべてポイントを奪われる苦しい展開。11月のアジア大会(中国)では、減量失敗から銅メダルに終わっていた。本来の切れが感じられない試合内容から、今大会も減量苦が懸念された。決勝はそのうっぷんを晴らすかのように豪快なタックル一発で三村を沈めた。

 組み手争いから三村の左足にタックルへいくと、フェイントをかけてからの右足に片足タックルへ移行してテークダウンを鮮やかに奪い、一気にフォール勝ちを決めた。三村が右肩を抑えて試合後も起き上がることができず、救急車で病院へ運ばれたほどだから
(左下写真)、その威力は強烈。“強い坂本”が帰ってきたことは間違いない!

 5月の全日本選抜選手権、9月の世界選手権(ロシア)、11月のアジア大会(中国)、今大会と、坂本は51s級時代にも経験したことがない1年に4度のリミット減量に挑んだ(注=ワールドカップは2kgオーバーで計量する)。1階級ダウンに加えて、その過酷さが坂本の体調をむしばんだのは確かだろう。しかし、アジア大会の失敗を生かすことができた。「今大会前の減量は、しっかり食事も摂れましたし、日本ということもあってじっくりできました」と言う。

 「もう一度、自分とレスリングを立て直すための大会」として今大会に臨んできた坂本と、他の25人の選手とでは経験値、モチベーションに開きがあったのではないだろうか。準決勝までの動きとはまるっきり異なる内容の決勝戦だった。“強い坂本”が帰ってきた。

 「来年はアジア大会の負けを取り返したい。減量の厳しさを知ることができたので、あとは自分の課題である、対戦相手との距離感を克服できるようにしていきたいです。近い間合いからでもタックルに入れるように、自分のスタイルを作り上げていきたいです。今回の天皇杯で勝てたことで、世界選手権の代表に半分は決まったようなものですから、オリンピック代表になれるように頑張ります」と、力強く話した。

 

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