【全日本選手権・優勝選手】男子グレコローマン60kg級・松本隆太郎(群馬ヤクルト販売)
【2010年12月23日】


(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)



 天皇杯賜杯へ最大限のアピールとなる優勝だった。全日本選手権の男子グレコローマン60kg級は、9月の世界選手権(モスクワ)銀メダリストであり、11月のアジア大会(中国)銅メダリストの松本隆太郎(群馬ヤクルト販売)が、決勝で5月アジア選手権(インド)代表の倉本一真(自衛隊)を破って大会連覇を達成した(右写真)

 最高のパフォーマンスで世界2位を経験し、アジア制覇ももくろんだ今秋。しかし11月上旬の全日本合宿前に右足首を負傷。アジア大会では初戦でけがを悪化させてしまい、「思うような試合ができなかった」と初戦黒星。敗者復活を勝ち抜いて何とか銅メダルを死守したが、1ヵ月後の今大会への影響が心配された。

 だが、この日のマットには両足で力強く立つ松本の姿があった。松本は「アジア大会は初日に試合があり、最終日まで現地で滞在したので、休息は十分に取れました」と話し、全日本選手権へ向けての気持ちの切り替えがうまくできたようだ。

 アジア大会での連戦を気力でカバーした松本だが、初戦の城戸義貴(自衛隊)に第2ピリオドを2−2Bとビッグポイントの差で落とし、決勝戦の倉本戦でも、第2ピリオドの終了間際にバック投げを受けて3失点。優勝するも、松本の表情は険しさが消えなかった。城戸、倉本ともに黒星を喫した過去がある。「負けた相手には嫌なイメージがあった」と話すように、今大会もその2試合だけが快勝とはいかなかった。

 だが、松本はいまや男子日本勢のエースだ。決勝戦の第3ピリオドでは、そのエースの意地を見せた。スタンドを得意とする倉本に一時は押され気味だったが、スタンド残り15秒でスキを見つけてテークダウン。そこからローリングも決めてみせた。

 この優勝で、来年の世界選手権出場へ一歩近づいた。「今年は2位。来年はもっといい色のメダルを狙う」と、優勝して一発で2012年ロンドン五輪代表の内定を取ることが目標(注=ロンドン五輪五輪の日本代表選考方法は未定。前回の選考方法に準じてのもくろみ)。世界2位、アジア3位となると、国内外で研究される可能性が高いが、「自分のスタイルはスタンドで差しで、体力勝負という日本最古のもの。研究されても大丈夫」と、松本流を貫いていく決心を見せた。

 

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