【特集】グレコローマンで苦手分野を克服! アジア大会に挑む重量級の星・荒木田進謙(専大ク)
【2010年11月5日】



(文=増渕由気子)



 4年に一度のアジアの祭典、アジア大会(中国・広州)まで3週間を切った。男子フリースタイル120s級は世界選手権代表の下中隆広(国士舘大ク)が辞退し、昨年アジア選手権3位の荒木田謙進(専大ク=左写真)が挑む。

■重量級期待の逸材だったが、今年は世界選手権代表落ち

 荒木田は2006年にアジア・ジュニア選手権で優勝し、2008年に世界ジュニア選手権3位へ。昨年はアジア選手権3位となり、シニアの世界でも実績を残し、重量級で際立つ成績を残してきた。佐藤満・男子強化委員長(専大教)から重量級のエースに指名されるほどの存在感を魅せていたが、2度目の世界代表をかけて闘った昨年12月の全日本選手権と今年5月の全日本選抜選手権で下中に連敗。世界代表から脱落してしまった。

 代表もれとなった荒木田だが、この夏は腐らずに精力的に練習を積んだ。モチベーションは「チームJAPAN」の誇り。「自分が日本代表の時、2番手、3番手の選手たちが僕を支えてくれた」と振り返る荒木田は、夏場の全日本合宿では専門のフリースタイルだけでなく、グレコローマンの練習にもスパーリングパートナーとして積極的に参加した。

 両スタイルの合宿参加は、自分にもメリットがあった。荒木田は「2年後の五輪を目指すには、人の倍やらないといけないと思った」と練習の虫に。得意の片足タックルが使えないグレコローマンでは、苦手分野の克服を図った。「スタンドでは差し、グラウンドではローリングとディフェンスです。海外ではグラウンドの防御が一つのポイントですから、自信つきました」と、夏場の特訓の成果に手ごたえを感じた
(右写真=10月の千葉国体もグレコローマンに出場し、優勝した荒木田)

■第1ピリオドは負けてもいいから動き回る!

 フィジカルや技の練習は十分に積んだ。残る課題は試合の組み立てで、荒木田が重要視するのは第1ピリオドの使い方だ。「第1ピリオドは負けてもいいから、自分から動き回って相手の技を引き出して2分間闘うこと。そうすれば、第2ピリオドでは相手のくせが読めて反応できるようになる。海外で第3ピリオドにもつれたら、体力で勝てます」。

 現在のルールは、ピリオドごとに点数はリセットされ、フォールさえ回避できれば次のピリオドでやり直しが効く。第1ピリオドに、相手に技を多く出させて、相手に慣れるかが重要だ。


 「一番ダメなパターンは、お互いに見合って0−0で終わり、第1ピリオドがクリンチにもつれること。そこで取られてしまうと、第2ピリオドのワンアクションで勝負が決まってしまいますから」と荒木田。5月の下中戦は、まさにそうだった。技を多く持つ荒木田だからこそ、技を出し合った試合になれば勝機が生まれる。そのためのポイントとして、荒木田は「動きを止めないことです。僕が他の重量級の選手に勝っているところは、動き続けられることなんです」と即答した。

 今回のアジア大会は、夏場の成果を確かめる絶好の機会にもなる。荒木田は「自分は今、立場がふわふわした状況です。アジア大会で勝って、自分の位置を確立したい」と誓った。昨年アジア選手権3位の経験もあり、荒木田にとってアジアの表彰台は現実的な目標だ。復活の舞台は整った。日本中量級のエースとして荒木田がアジアで再起なるか―。(左写真=2009年アジア選手権で3位となった荒木田。この時の調子を取り戻せるか)

荒木田進謙(あらきだ・のぶよし)=専大ク
 1988年3月26日、青森県生まれ、22歳。八戸クラブ出身。青森・光星学院高〜専大卒。高校時代の04・05年に2年連続で高校三冠王を獲得するとともに、2年連続で全日本選手権2位。専大に進み、1年生の時(06年)にJOC杯ジュニアオリンピック、全日本学生選手権、全日本大学選手権と国体の学生タイトルを総なめにするとともに、アジア・ジュニア選手権で優勝。
 2007年は故障で戦列を離れたが、08年は全日本選抜選手権で優勝し、世界ジュニア選手権で3位入賞。国体でも勝ち、全日本選手権で初優勝。2009年の世界選手権へ出場したが、その後、国内大会で敗れ、2010年世界選手権は逃した。180cm。


 ◎荒木田進謙の最近の主な国際大会成績


 
《2010年》
 
【2月:デーブ・シュルツ国際大会】=12選手出場
敗復戦 ●[フォール、2P0:27(0-2、F)]Aaron Anspach(米国)
1回戦 ●[0−2(1-2,0-7)]Ryan Flores(米国)

 
《2009年》
 
【9月:世界選手権(デンマーク)】26位(27選手出場)
1回戦 ●[0−2(TF0-7=0:59,0-4)]Kara Recep(トルコ)

 【5月:アジア選手権(タイ)】=
3位(9選手出場)
3決戦 ○[フォール、1P(F6-2)]Hei Yisahabei(中国)
敗復戦 ○[2−0(1-0,3-1)]Sahah Mahammad(イラク)
1回戦 ●[0−2(1-5,1-5)]Nam Kyung-Jin(韓国)

 
【2月:デーブ・シュルツ国際大会(米国)】5位(6選手出場)
リーグ5回戦 ●[フォール]Jamie Cox(カナダ)
リーグ4回戦 ○[フォール]Brad Peters(米国)
リーグ3回戦 ●[0−2(0-1,0-2)]Valery Bedoev(ロシア)
リーグ2回戦 ●[0−2(0-2,0-3)]Rajiv Tomar(インド)
リーグ1回戦 ●[1−2(0-3,1-1,1-4)]Nick Matuhin(ドイツ)

 
《2008年》
 
【8月:世界ジュニア選手権】3位(18選手出場)
3決戦 ○[2−1(0-2,4-1,3-1)]Jack Clayton(米国)
準決勝 ●[フォール、2P(0-3,0-7)]Soslan Gagloev(ロシア)
3回戦 ○[2−1(1-2,5-2,5-0)]Vyacheslav Muzaev(ウクライナ)
2回戦 ○[2−1(0-2,2-2,2-0)]Mustafa Cebeci(トルコ)
1回戦  BYE

 
【4月:五輪予選第1戦】17位(19選手出場)
2回戦 ●[0−2(0-2, 0-1)]Antoine Jaoude(ブラジル)
1回戦  BYE

 
【3月:アジア選手権】7位(8選手出場)
1回戦 ●[0−2(2-3,TF0-6=1:02)]Chuluunbat Jargalsaikhan(モンゴル)

 

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