【特集】メダル獲得はならなかったが、着実な前進…男子グレコローマン96kg級・北村克哉(ドン・キホーテ)
【2010年11月23日】



(文=樋口郁夫、撮影=保高幸子)



 今年5月のアジア選手権で銀メダル、銅メダルを獲得するなど躍進する日本重量級の中で、これまで結果を出すことができず、流れに乗り遅れていた男子グレコローマン96kg級の北村克哉(ドン・キホーテ)が初戦でトルクメニスタンの若手選手を撃破。グレコローマンの国際大会で初の白星を挙げた。

 2回戦でアザマート・エリキンバエフ(キルギス)に0−2で敗れて上位進出はならなかったが、これまで出た国際大会で黒星続きだったことを考えれば、間違いなく前進を示したと言えよう。

 サパルマメドフ(トルクメニスタン)との初戦
(右写真)は、第1ピリオドこそスタンド戦を0−0で終了。グラウンドの攻撃で攻めきれずに落としたが、第2・3ピリオドはスタンドの闘いで得点。腕を積極的に差していく姿勢が表れており。勝ちに行く姿勢があった。

■日本重量級の上昇ムードに乗れるか

 2回戦はその気持ちが強すぎたのだろうか、差して前へ出るタイミングを狙われて首投げを受けてしまった。「(0−0の1ポイント争いの)やっちゃいけないシーンで、3点やってしまった」と悔やんだ北村は、「得点能力がない。相手の方が上だった」と、力不足を強調した。

 この階級の世界チャンピオンにはイランが君臨。今回出場してきたイランは別の選手だが、アジア選手権で優勝しており優勝候補の大本命。その選手が同じブロックになり、準決勝まで勝ち上がらなければ3位決定戦への道はないと覚悟していた。「最低でもメダル争いにはからみたかった。イランとの試合までは行きたかった」と話し、あと一歩の壁を乗り越えられなかった悔しさは残った。

 しかし、9月の世界選手権でも北京五輪2位の選手に大善戦。審判によって負けにされたような試合を展開しており、今回の2試合でも、スタンド戦で押し負けるようなシーンはなかった。何よりもポイントを取りに行く積極さがあり、同じ負けでも、こうした姿勢があれば何かを得て次の闘いに生かしてくれるのではないか、という期待が持てる。

 報道陣の間からは「日本人離れしている肉体」といった声が挙がるなど、盛り上がった筋肉は欧米選手のそれに劣らない。世界選手権での善戦と今回の初白星は、これまでの練習の方向性が間違っていなかったことを証明したと言えるだろう。

 「ちょっとでも前進しているかもしれないですね」と、控えめながらも自身の成長を口にした北村。重量級の上昇ムードに乗って、これからの躍進が楽しみだ。

 

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