【特集】前世界王者倒してアジア王者へ!…男子フリースタイル66kg級・米満達弘(自衛隊)
【2010年11月25日】



(文=増渕由気子、撮影=保高幸子)



 16年ぶりにフリースタイルのアジア大会王者が誕生! 66s級の米満達弘(自衛隊)が決勝で前世界王者のメフディ・タガビ(イラン)にストレートで完勝し、日本勢の同スタイルとして16年ぶりに金メダルを獲得した。優勝した瞬間、もろ手をあげて勝利をアピール(左写真)。日本の国旗を持って、マットを2周した。

 白い歯をこぼしたのはその一瞬だけ。その後は「緊張してしまって」と、表彰式は一変して硬い表情で臨んでしまった。「(国際大会で優勝するなんて)経験がないので、どうしていいか分からなくて」と初々しい勝利の舞いだった。

 タガビは昨年5月のアジア選手権の決勝で完敗した相手だ。「組み手をもっと頑張らないといけない」と課題を挙げていた米満は、この1年半、得意のタックルに頼る攻めだけではなく組み手を徹底的に習得してきた。その成果がズバっと出た。試合で組み手を有利に進めたのは米満。田南部力コーチが「前はイランが米満の手首をつかんでいたけど、今日は米満が腕をつかんでいた」と常にコントロールし、イランのタックルを未然に防ぐことができた。相手が攻め手を欠いた残り15秒、右足タックルをつかんで落ち着いてテークダウンを奪い、このピリオドを先制。

 第2ピリオドはタックルで先制されたが、中盤にタックルで取り返し、終盤に相手をつぶし、ピリオドスコア2−0で完勝。「決勝はきつくなかった。あっけなかった」と、前世界王者との対決に苦戦を覚悟した米満にとって意外な結末だった。

■北京五輪後の2度の世界選手権王者を倒し、世界のトップ3へ

 2009年アジア選手権2位、同世界3位とシニア・デビューのあと、いきなり連続して表彰台に上がった。だが、今年9月の世界選手権ではキューバの選手に屈し初戦敗退。それだけに今回は真価の問われる大会で、見事に優勝と最高の成績で応えてみせた。

 「(アジア大会の優勝は)すごくいいですね」と興奮気味に話した米満だったが、「でもオリンピックで金メダルを取るまでは気を抜けない」と勝ってかぶとの緒を締めることも忘れなかった。今大会は強豪選手にリベンジを成功させて、4年に1度のビッグタイトルで優勝できた。それも去年の“負け”を経験していることが大きい。「(決勝の相手は)アジア選手権で1回やっているので、手の内が分かりやすかった」。
(右写真=タガビにタックルを決める米満)

 この成果を次につなげるため、米満は「一番大切な試合で闘う時のために、(相手の)感覚をつかみたいから、いろいろな選手と試合経験を積みたい」と、目標の五輪金メダルのために経験値を上げることを課題とした。

 米満は昨年の世界選手権の3位決定戦で、今年世界王者に輝いたスシル・クマール(インド)に勝って銅メダルを決めている。今回の決勝で勝ったタガビは昨年の世界チャンピオン。二人の“世界王者”を倒した米満は、間違いなく世界トップ3の座を確立させた。

 12月には、「アジア大会王者」の肩書きを持って全日本選手権でがい旋する。米満にいよいよロンドン五輪の足音が聞こえてきた。

 

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