【特集】金1個の惨敗に、会長命令で居残り練習!
【2010年11月27日】


(文・撮影=樋口郁夫)



 9月の世界選手権で金メダル3個を獲得し、団体(国別対抗得点)世界一をアゼルバイジャンから奪還した日本女子。今大会は目標を「全階級金メダル」に掲げたものの、金1個という結果に終わった。世界選手権などと違って表彰はしないが、規定を当てはめると国別対抗得点はカザフスタンと同点(30点)で内容も同じ。同率1位だが、2012年ロンドン五輪へ向けて暗雲漂う結果だったと言えるだろう。

 栄和人強化委員長(至学館大教)は、報道陣から3階級V逸の感想を聞かれ、「オリンピックでは4階級を取るので、今回は申し訳ありませんでした」と頭を下げた。全試合終了後は、福田富昭会長と高田裕司専務理事が厳しい表情でウォーミングアップ場を訪れ、帰り支度をしていた日本チームに「練習しろ!」と指示。

 福田会長は「課題が見つかった今、やらなければ意味がない。明日も練習させる。日本へ帰ってからもすぐに練習だ。休養なんて甘いことを言っていたら、次も勝てない」と言い放った
(右写真:福田会長=中央背中=もマットに上がり、高田裕司専務理事=その左=とともに居残り練習)

 これまでにも、団体世界一を逃したことはあり、アジア選手権でも中国の後塵を拝したこともあった。しかし、「負け方がひどすぎる」と話し、団体1位という結果とは裏腹にかなりの危機感を感じたようだ。「いつもの技ができていない。技を知っていても、試合でやらない、できない、では、知らないのと同じだ。試合で使えないのはコーチの指導も悪い」と、どこまでも厳しい言葉続く。

 唯一、無失点で金メダルを取った55kg級の吉田沙保里(ALSOK)だけは「自分のレスリングができていた。問題はない」と評価したが、「他がこんな状態では、不安にもなるし、負担もかかる」として、チーム一丸となっての上昇が必要だと強調した。

 福田会長は全日本チームの監督を務めていた1983年の世界選手権で、教え子の富山英明・現日大監督が3年連続で世界一を逃したことが我慢できず、試合終了後、鍵をかけられてしまった体育館の脇の芝生で2人で練習したことがある。「鉄は熱いうちにたたけ、なんだ」。その経験が、富山選手を翌年のロサンゼルス五輪の金メダルに押し上げた。惨敗後、すぐに練習を始めた日本チーム。ロンドン五輪ではきっと栄光をつかんでくれるとだろう。

 

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