【特集】世界選手権へかける(2)…男子グレコローマン96kg級・北村克哉(ドン・キホーテ)【2010年8月3日】

(文=保高幸子)


 2007年世界選手権(アゼルバイジャン)で加藤賢三が5位に入賞し、日本の重量級も世界に通用することを証明したグレコローマン96kg級。今年の世界選手権には、昨年に続き北村克哉(ドン・キホーテ=左写真)が挑む。フリースタイルとグレコローマンを合わせて3度目の日本代表となる。

■国内では頭ひとつ抜け出ているが…

 昨年12月の全日本選手権では無失点で優勝。今年5月の全日本選抜選手権では、かかとの負傷を抱えながらも申し分ない内容で勝ち、昨年に続いての世界選手権代表の座をあっさりと勝ち取った。日本では頭ひとつ抜け出ている。

 しかし、世界の壁は厚い。グレコローマンでの初出場となった昨年の世界選手権は「自分でも悔いが残ったのか、出し切ったのか、分からないんです」と振り返る。訳の分からないうちに終わったという意味に考えられるが、「相手のプレッシャーを受けてしまいがちで…。外国人と比べたら体格も体力も基本的なものが足りていないんです。全部足りてない。不器用ですし」と反省点がどんどん出てくることを考えれば、悔しい思いをしたことだけは間違いない

 1回戦負けではあったが、2006年世界王者のヘイキ・ナビ(エストニア)相手に第1ピリオドを取り、練習の成果を出せた試合だった
(右写真)。「勝ったら自信になったけど、負けたから何も言えない」と言う一方で、少なくともこの善戦は、「全く歯が立たないのでは?」といった消極的な考えを消してくれたはずだ。

 北村は「自分の勝ちパターンを作りたい」と話す。一方で、どうしても体格でかなわない、という事実が立ちはだかってしまう。物事を深刻に考えるタイプであり、気持ちの優しさも出るようだ。

 それでも自分なりにできることを見つけている。「スタンドで自分の有利なポジションに持っていく。まずはそこからです」また、昨年の世界王者バラズス・キス(ハンガリー)は北村と同じぐらいの身長で手足が長いわけでもない。北村にとって“等身大”の王者は目標になる選手だ。

■「汚いレスリング」であっても、勝負の世界は勝つことが重要!

 昨年は久しぶりの世界選手権出場で、緊張しっぱなしだったという。今年の世界選手権に向けての意気込みは、そんな不安を打ち消すほどある。それは11月のアジア大(広州)出場も決まり、自分の力をアピールしたいという気持ち。「不器用なりに、汚くてもいいから1つでも勝ちたいです」と宣言した。

 「汚いレスリング」という言葉は、日本ではあまり良しとされないこともある。それでも、勝たなければ認めてもらえないのが勝負の世界。それをよく知っている北村の覚悟だ
(左写真=小平清貴コーチの指導でウエートアップに挑む北村)

 そんな思いを抱えた今年の世界選手権は、ハングリーさをむき出しにして、どん欲に勝利にこだわる。ひとつでも多くの白星を勝ち取る北村の姿を楽しみにしたい。


北村克哉(きたむら・かつや)=SRC、2年連続2度目の出場(フリースタイルと合わせ通算3度目)
 1985年12月14日、東京都生まれ、24歳。東京・東京工高(現駒場高)〜専大卒。高校時代の03年に全国高校選抜選手権120kg級3位、国体フリースタイル97kg級3位など。専大へ進み、04年JOC杯ジュニア選手権フリースタイル96kg級3位へ。05年に120kg級で全日本学生選手権を制し、全日本大学選手権は3位。全日本選手権でも3位に入賞した。
 06年は明治乳業杯全日本選抜選手権で勝ち、世界選手権へ出場。その後、グレコローマンに転向し、07年学生二冠(全日本学生選手権、全日本大学グレコローマン選手権)優勝などを経て、08年全日本選手権で優勝。09年はアジア選手権と世界選手権に出場し、全日本選手権で優勝。182cm。



◎北村克哉の最近の国際大会成績

 《2010年》
 【5月:アジア選手権(インド)】9位(9選手出場)
1回戦 ●[0−2(0-1,0-1)]An Chang Kun(韓国)

 
【2月:デーブ・シュルツ国際大会(米国)】=18選手出場
敗復戦 ●[フォール、1P1:44]Moises Hernandez(米国)
2回戦 ●[0−2(0-1,0-6)]Robbie Smith(米国)
1回戦  BYE

 《2009年》
 
【9月:世界選手権(デンマーク)】27位(34選手出場)
1回戦  BYE
2回戦 ●[1−2]Heiki Nabi(エストニア)

 
【5月:アジア選手権(タイ)】8位(10選手出場)
2回戦 ●[1−2(0-2,5-2,0-1)]Kumar Anil(インド)
1回戦  BYE

 
【3月:ハンガリーカップ】24位(27選手出場)
1回戦 ●[0−2(0-2,0-3)]Vladzimir Marusav(ベラルーシ)
 
 
【2月:ニコラ・ペトロフ国際大会(ブルガリア)】13位(17選手出場)
敗復戦 ●[1−2(0-2,1-0,0-3)]Konstantin Efimov(ロシア)
2回戦  ●[0−2(0-1,0-2)]Serkan Ozden(トルコ)
1回戦  BYE

 《2008年》
 
【7月:世界学生選手権(ギリシャ)】7位(8選手出場)
1回戦 ●[0−2(1-2,1-3)]Yavuz Guevendi(トルコ)
 
 
【2月:デーブ・シュルツ国際大会(米国)】
敗復戦 ●[2−0(2-0,3-0)]Margulan Assembekov(カザフスタン)
1回戦 ●[フォール、1P1:28(0-6)]Justin Ruiz(米国)

 

inserted by FC2 system