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【特集】日本代表を譲るわけにはいかない…男子グレコローマン84kg級・斎川哲克(両毛ヤクルト販売)
【2011年3月4日】


(文=保高幸子)



 2010年の総決算となる昨年12月の天皇杯全日本選手権は大波乱の連続だった。グレコローマンで言えば、3階級で世界選手権、アジア大会の代表が敗れる3階級で敗れる大番狂わせ。84kg級の斎川哲克(両毛ヤクルト販売)も苦汁を飲んだ1人だ。

 全日本選手権決勝で敗れた岡太一(拓大)は現役の大学生。学生四冠王で波に乗っているとはいえ、アジア選手権銀メダルなど、海外で昇り調子の斎川にとってはまさかの敗戦だった
(右写真:岡に敗れた斎川=赤)。11月後半に中国・広州であったアジア大会から全日本選手権までの期間の短さは、代表選手に疲れを残す試練となったが、斎川は「試合で負けるというのは、弱いということです。アジア大会で1試合しかしていない僕の言い訳にはなりません」と強い口調で言う。

 その斎川が力を入れて練習しているのは、くずしの技術。全日本選手権後の今も自分の課題はそこだと認識し、磨いている。練習量は自他ともに認める多さだが、「質も大事です。コーチにも言われますが、頭を使ってやる。考えて、考えて、反復練習をしています」と、上を目指す意欲は高い。まだ完成はしていないが、今冬の2度の海外遠征(2月の米国と現在行っているハンガリー)で磨きをかけたいところだ。

■グレコローマンの本場、欧州選手相手の白星がほしい

 今冬最初の遠征の「デーブ・シュルツ国際大会」では1階級上の96kg級に出場。2008年北京五輪で、加藤賢三(自衛隊)を下し、2010年世界選手権96kg級8位のダイゴロー・ティモンチーニ(イタリア)を敗者復活1回戦で破った。しかし、結果は6位。斎川もは「知っている選手だし、勝ったときはうれしかったけど、結局その後負けて6位ですから…。それに、北京の頃は僕も96kgでやっていたので、1階級上に勝ったという気持ちはありません。」と冷静だ。
(左写真=全日本合宿で練習する斎川)

 「(大会前の)合宿では勉強になりました。いろいろ国の選手が来ていたし、(外国選手は)体が大きくても動きは遅くないし、瞬発力、ここぞというときの力は日本では味わえないものです」と、海外の重量級の選手と体を合わせる事のできる数少ない経験もした。

 「ハンガリー・グランプリ」出場のためソンバトヘイに入った斎川が、今、一番飢えているのはヨーロッパでの白星だ。「とにかく勝ちたい。ヨーロッパの試合で白星を重ねたい。練習をいくらやっても、試合で勝たなければ気持ちを上げることはできない。このハンガリー遠征ではどんな勝ち方でもいい、勝つ事を1番に考えます。」と力強い。

 同階級の北京五輪までの日本代表は松本慎吾・現日体大監督。同じ日体大出身であり、海外で実績を残したグレコローマン重量級の先輩。身近で活躍を見て、練習をつけてもらった。「僕もああなりたい。練習量は同じだと思うけど、勝たなくては意味がないんです。結果がついてないと」。グレコローマンの本場での白星は、勢いをつけるためにも必要だ。斎川の勝利への欲望は底知れない。

■岡太一にリベンジして3度目の世界選手権へ!

 今回の全日本選手権では不覚を喫したが、2年間守った日本代表の座を、誰にも譲るわけにはいかない。初めての世界選手権と2度目とでは緊張感が全く違った。昨年の世界選手権では、「実力差があるとは思わない。自分の頑張り次第で勝てると思った」と何かをつかんだ。今年出場する予定の3度目の世界選手権で、自分の力を存分に出したい気持ちでいっぱいだろう。
(右写真=2010年世界選手権の1回戦を勝った斎川)

 それには4月末の全日本選抜選手権で優勝し、プレーオフで岡にリベンジしなくてはならない。だが、「ライバルというのはいません。選抜に勝ち、代表の座を取り戻しにいきます」と、特定のライバルよりも自分のレスリングをあげていくことが大切だと考えている。

 ハンガリー遠征、そして4月の全日本選抜選手権と続く試合。「今は自分のレスリングのことしか考えられない」と、ひとつひとつの試合を見つめる斎川だが、その向こうには2012年ロンドン五輪が見えているはずだ。2度の世界挑戦で得た経験をいかし、3度目の世界選手権で大きな飛躍をしたい。来年に迫っている大舞台につなげるために、今、斎川は一皮むけようとしている。

 

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