2011年全日本チーム記事一覧


【特集】前半をしのがれた時の攻撃に課題…72kg級・浜口京子
【2011年3月8日】


(文・撮影=樋口郁夫)



 世界一奪還と五輪3度連続出場を目指す72kg級の浜口京子(ジャパンビバレッジ)は、予選3回戦で、2008年アジア選手権で勝っている許晴(中国)に1−2で敗れ、3勝1敗の成績で終えた。(左写真=3位決定戦のカナダ戦に勝った浜口)

 許晴戦は、第1ピリオドから仕掛けていく積極的な試合だったが、第2ピリオドは守られて0−0。クリンチの防御で敗れ、第3ピリオドは自滅のような形でポイントを失った。「勝つ気持ちは最後まで持つことができた。第3ピリオドは、あとひとつ攻め込みが足りなかった」と振り返る。

 第1、2ピリオドの激戦で、第3ピリオドはややスタミナ切れした面があった様子。ボールピックアップに行く時にかなりのバテが感じられた。このことを問われると、「全部の力を出し切ろうとしましたから。動けてはいましたが…」と否定はせず、「今度はそうならないようにしたい。反省点です」と分析した。

 開始から気合を入れて爆発的な力で攻めるのは、決して悪くはないが、100メートル走のような感覚で2分間を闘えるものではない。木名瀬重夫監督(日本協会専任コーチ)、藤川健治コーチ(自衛隊)ともに指摘するのは、その点。「力を抜くべきところでは抜き、勝負をかけるところで最大限の力で仕掛けなければならない」(藤川コーチ)といった技術がなければ、勝負が第3ピリオドにもつれた時に、肉体的にきつくなり、防御においても粘れない結果につながる。

 第3ピリオドの失点は、まさにそんな感じで失ったポイント。藤川コーチは「我慢しきれずにやってしまった」と指摘する
(右写真:0−0のあとのラスト20秒、相手を追い詰めた浜口=赤=だが、この体勢から自分がポイントを失ってしまった)。もつれた時に自分のいる位置や体勢を見失ったことは、これまでにもあった。スタミナ切れの状態では、それがさらに顕著に出てしまう。開始からスパートすることも大事だが、勝負どころを見極め、力の強弱をつける試合展開を望んだ。

■最後のカナダ戦を会心の勝利で飾り、表情は明るい

 がっちり構えた状態では、脚をさわらせることはあっても、テークダンされないだけの足腰の強さがある。攻撃でも瞬発力や崩しについては世界で通じる力は十分にあり、常に試合の主導権をにぎっているのは浜口の方だ。

 しかし相手も必死に闘っているし、がっちり守ってくる選手相手に2分間でポイントを取れないことはしばしばある。3位決定戦のリー・ローライン(カナダ)戦の第1ピリオドに決めたような外無双からのフォール勝ちは、理想の勝ち方ではあるが、そこをしのがれた時、今度は攻撃していた方がスタミナ切れしてしまうことはよくある。その展開になった時の工夫が、今の最重要課題といったところか。

 カナダの選手は初顔合わせで、まったく知らない選手。「それであっても、自分のレスリングをすることができた」と、最後は会心の勝利を挙げて表情は明るい。「自分のレスリングが、一歩か二歩か分からないけど、またひとつ前へ行ったような気がします。出てよかった」と言う。

 5月のアジア選手権(ウズベキスタン)に出場するかどうかは、まだ決めていないが、9月の世界選手権(イスタンブール)では、進化した浜口を見せてくれるだろう。

 

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