2011年全日本チーム記事一覧


【特集】五輪参加の夢に向かってスタート…女子チーム・トレーナー、高橋あすかさん
【2011年3月14日】


(文=樋口郁夫)



 今月初め、フランス・リーバンで行われた女子ワールドカップのトレーナーには、今年から本格的にチームを担当することになった高橋あすかさん(ファクトリー・ジャパン=25歳、右写真)が帯同し、伊藤順一ドクター(心身障害児総合医療療育センター)とともに選手の体のケアに当たった。遠征前は「最初でしたので、とても緊張しました」とのことだが、試合での選手の頑張りを見たら、大会後は「涙が出そうになるくらい感動しました」と振り返る。

■合宿時大会とででは、マッサージのやり方が違う

 チームに接するのは、昨秋、東京・味の素トレーニングセンターで行われた全日本女子チームの合宿の時以来2度目。合宿の時と大会の時とでは、当然、マッサージのやり方が違ってくる。試合を控えている時は、筋肉をゆるめすぎると(ほぐしすぎると)リラックスしすぎることになり、体を動かしづらくなってしまうという。ストレッチなどを多く取り入れ、試合のできる体にすることが役目だ。

 もちろん、練習と試合とでは選手の緊張の度合いも違う。今回は団体戦ということもあり、選手の緊張度は最高レベルではない。2kgオーバーで計量するルールなので(48kg級は50kgまで落とせばいい)、減量面でも選手の苦しさは軽減されている。世界選手権では、こうはいかない。もっとピーンと張りつめた緊張感が漂うことが予想される。

 そのためにも、今回の大会を経験できたことは大きいだろう。5月のアジア選手権(ウズベキスタン)も同行予定とのこと。段階をふんで選手の心理状況を把握することができ、いずれチームに完全に溶け込んでくれることが期待される。
(左写真=試合を終えた選手とのコミュニケーションをとる高橋さん)

 2004年アテネ五輪で採用されて以来、レスリングの女子と言えば日本スポーツ界の花形スポーツ。当然、今回同行した選手の何人かは名前を知っていた選手だ。緊張し、近づきがたい面があった。実際に接してみると、「皆さん、私のことを気遣ってくれ、自分(選手)の方からコミュニケーションをとってくれて、とても助かりました」と振り返る。

 選手が7人のため、ツイン部屋の宿舎では63kg級の伊調馨選手(ALSOK)と同部屋となった。「伊調さんに抱いていたイメージは、一匹狼的で、話しかけずらい、近寄りずらい、というものでした。でも、そんなことなく、よくしゃべってくれ、とても面白い方でした。心が大きい人だと思いました」と言う。

 72kg級の浜口京子選手(ジャパンビバレッジ)は、父・アニマル浜口さんの「気合だ!」どおり、「本当に元気な人。一緒にいるだけで、パワーをもらいました」と、こちらはイメージ通りの明るさにびっくりしたという。

■9月の世界選手権では、涙ボロボロの連続か

 高校時代まではバスケットボールの選手だった。選手としてより、トレーナーこそが自分の進むべき道と感じ、「オリンピックに同行できればいいな」という気持ちを持ったという。専門学校へ進んでトレーナー学を勉強。卒業後、ファクトリージャパンに入って修業を積み、今年が5年目。前任の楠原トレーナーに代わり、レスリングを担当することになった。

 これまでにアメリカンフットボールを担当したことがあるが、海外への遠征に同行したことはなかった。したがって、今回の遠征がトレーナーとして海外に同行する初めての経験。それが日本を代表するチームということで、「いつになるか分かりませんが、オリンピックへ同行する夢に一歩近づいたのかな、という気持ちです」と、目を輝かせた。
(右写真:記念すべき第1回遠征は銅メダル=後列右から2人目)


 今回は3位に終わったが、「自分の手がけた選手が優勝したら、きっと涙が止まらないと思います」と、選手とともに燃えられる喜びを感じたようだ。9月の世界選手権(トルコ・イスタンブール)でも高橋さんが女子チームを担当することがほぼ決まっているという。チームを支える貴重な力になってくれるだろう。

 

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