2011年明治杯全日本選抜選手権記事一覧


【特集】五輪への強い思いを爆発させる!…男子グレコローマン74kg級・鶴巻宰(自衛隊)
【2011年4月18日】


(文・撮影=保高幸子)



 4年に一度のオリンピックが来年8月に迫り、いよいよ、し烈な代表争いが始まる。今年の世界選手権(9月、イスタンブール・トルコ)の代表権を勝ち取る事が、2012年ロンドン五輪出場への一番の近道だ。

 グレコローマン74kg級の鶴巻宰(自衛隊=
右写真)は、2008年北京五輪の出場はならなかったものの、国際大会では数々のメダルを獲得してきており、グレコローマンでは一番のベテラン。腰のけがで昨年の世界選手権(ロシア)は辞退したが、その2ヶ月後に行われたアジア大会(中国)では実力を発揮し、見事に銀メダルを獲得した。名実共に74kg級のトップと思われた。

■初戦で田村和男や金久保武大と激突する可能性もある

 しかしアジア大会の約1ヶ月後の全日本選手権で、誰も予想しなかった事態に陥った。2回戦でダークホースの田村和男(ワセダクラブ=当時早大)に敗れ、表彰台にすら昇れなかった。

 アジア大会の直後であることや、元からの腰の故障が重なったためと思われたが、それであっても、海外の実績などを鑑みると、鶴巻が日本のトップであることには変わりなく、表彰台にすら昇れない事態は大きな衝撃だった。

 そのため冬の間、海外遠征はおろか全日本合宿にも参加せず自衛隊で練習を積むこととなった。「ウエートトレーニングや腰のリハビリを中心にやってきました。筋力はアジア大会前の状態まで戻っています」と鶴巻。

 マット練習は思うほどできていないが、今年は「世界選手権でメダルを取って、全日本選手権で優勝して、五輪出場を決めます」と、最短の出場権獲得をイメージしている。腰のけがは背負って行くしかないもの。「うまく付き合っていきます」と言う。
(左写真=自衛隊で練習を重ねた鶴巻)

 今月末に迫った全日本選抜選手権(4月29〜30日、東京・代々木競技場第2体育館=同級は30日)では、優勝してさらにプレーオフで田村に勝たなければ今年の世界選手権代表は勝ち取れない。全日本選手権の結果からして、ノーシードとなることが予想される。初戦から、昨年繰り上げで世界選手権に出場して5位となった金久保武大(ALSOK)や、全日本王者である田村との激突もありうる。気を抜けない闘いが続くだろう。

■今回のV逸=五輪に行くことはできない!

 「正直、世界選手権のことまで具体的には考えられません。でも、この選抜で勝たないと五輪にいくことはできないと思っています」。もし世界選手権に出場できなかった場合、他の選手がメダルを取っても取らなくても、故障を抱えたベテラン選手は、度重なる減量や調整で苦しみながら出場権を取りに行くこととなる。「体がボロボロの状態で五輪に行っても意味がないです。選抜では、どう勝つか、よりも、とにかく、どんな形でも不細工でも勝ちに行きます」と話す。

 2004年の全日本選手権でグレコローマン史上6番目の若さの20歳6ヶ月で全日本王者となった鶴巻も、2012年ロンドン五輪では28歳になっている。これが最後の五輪挑戦になるかもしれない、というベテランの思い−。どの選手よりも、五輪への強い思いを抱いているという気持ちがある。
(右写真=アジア大会で銀メダルの鶴巻)

 「日本のグレコローマンは年季だってことをみせますよ!」と笑いながら話す鶴巻。けががあるとはいえ、今までも付き合ってきたもの。ベテランらしいうまい調整で臨んでくるだろう。あふれるほどの五輪への渇望を爆発させ、年季のなせるレスリングで若手を突き放してみせたいところだ。

 

inserted by FC2 system