2011年全日本チーム記事一覧


【特集】宮古商高が参加「インターハイ出場目指して頑張ります!」
【2011年4月24日】


(文・撮影=増渕由気子)



 3・11東日本題震災から約1ヶ月半。JOC杯ジュニアオリンピックが予定通り横浜文化体育館で開催され、津波で甚大な被害を負った岩手県宮古市の宮古商高から4選手がエントリーした。

 全員が初日で姿を消したが、4月の上旬から練習を再開し、この日のために調整を続けてきた。上野堅太郎監督は「少しずつですが、日常が戻ってきています」と報告した。
(右写真:上野監督=中央=と選手たち)

■すべてを失い、情熱が途絶えかけたが…

 宮古商高は今月2〜3日のジュニアクイーンズカップ(東京・駒沢体育館)にもエントリーしていたが、欠場した。上野監督は「あの頃はまだ、レスリングができる状況じゃなかった」と振り返る。チームは、今夏のインターハイ開催地として地元出場を目指す最中に被害にあった。2年前に専大卒の上野監督が着任。レスリングの強化に本格的に乗り出し、同県の種市高や盛岡工高に追いつけとばかりに強化に取り組んできた。

 「自身も地元開催に向けて盛り上がってきたところで、すべてゼロになってしまった」。震災のショックで、上野監督はレスリングへの情熱が途絶えかけたという。「もう(強化は)いいや…」。その切れかけた心をつないだのは、全国民からの応援だった。「私の場合、家が流されてしまい、さらに火災によって財産も燃えてなくなってしまいました。残っているものは、震災当日に着ていたスーツ一着と、携帯電話くらいです」。

 試合での服装も、「下着からほとんどが支援物資です。全国の皆さまに本当に感謝しています。おかげさまで現在、物資は足りています」と話した。

 支援のおかげで、物資不足で困ったことはなかったが、自宅がなくなったショックとストレスは相当なもの。仮住まいの生活が続き、物資があっても心が晴れることはなかった。「救われたのは、専大時代の仲間たちが寄せ書きしてくれた色紙です」
(左写真)。この色紙に励まされて、「レスリングの指導を頑張ろう、そして地元でのインターハイに子供たちを出場させよう」と再び指導の心に火がついた。

■運命のインターハイ予選は6月4日

 全国1億2千万人の力と同期たちの励まし―。さらに、上野監督に力強いパートナーがついた。「今年4月からインターハイの特別強化コーチとして、岩崎健太(専大卒=2005年全日本選抜選手権グレコローマン60kg級2位)が高校で指導してくれることになったんです」。男子部員は現在7名。そこに5、6名の進入部員が入る予定だ。

 インターハイ開催予定だった体育館は被害を免れたが、宿泊施設などのめどが立たず、全国高体連は4月上旬、宮古で開催予定だったレスリングとセーリングの代替開催を決定した。今年のホスト県は北東北3県で、青森や秋田での代替開催も考えられるが、上野監督は「岩手県内で開催が決まりそうです」と話し、開催県に与えられる出場2枠に滑り込む腹積もりだ。

 岩崎コーチは上野監督の一つ下の後輩。「考え方が同じで、グレコローマン出身ですからパワーレスリングの方法など僕にないことをたくさん知っているんです」と上野監督は笑顔を見せる。インターハイ予選は6月4日。残り1ヶ月わずかだが、「あきらめてない。確かに練習ができなかった時期があるが、この1ヶ月で、子供たちは精神的に強くなった。この勢いで、種市さんと盛岡工さんに挑戦します」と、地元インターハイでの団体戦出場を誓った。


 

inserted by FC2 system