2011年明治杯全日本選抜選手権記事一覧


【特集】明治杯全日本選抜選手権・男子グレコローマン66kg級・岡本佑士(拓大クラブ)
【2011年5月2日】


(文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)



 男子グレコローマン66kg級、岡本佑士(拓大クラブ=左写真)の勢いが止まらない。昨年12月の全日本選手権を初制覇した気鋭のレスラーは、今回の明治杯全日本選抜大会でも安定した試合ぶりで初優勝。ガッツポーズで試合を終え、「世界選手権のキップを取れてうれしい」と声を弾ませた。

 静岡・飛龍高校で高校三冠王を達成。元々フリースタイルの優秀なレスラーでありながら、グレコローマンの力強さに魅せられ、大学に入ると本格的にグレコローマンに参戦した。今となってみればこの判断が絶妙だった。大学2、3年と連続して全日本大学グレコローマン選手権を連覇。

 圧巻は拓大のキャプテンとして迎えた最上級生の昨シーズンだった。8月の全日本学生選手権、10月の国体と全日本大学グレコローマン選手権と連勝を重ね、最後の全日本選手権でも、60s級で五輪3度出場の笹本睦(ALSOK)を決勝で下してタイトルを奪った。

■この冬、3度の海外遠征で鍛える

 年が明けて2011年。岡本にさらなる成長のチャンスが巡ってくる。全日本チームの冬の海外遠征に参加し、2月のデーブ・シュルツ記念国際大会(米国)で2位へ。続く学生選抜の欧州遠征にも参加し、ブルガリアで行われた「ニコラ・ペトロフ国際大会」では5位。

 3月の「ハンガリー・グランプリ」は初戦敗退で終わったが、その後の合宿で外国選手と十分に手合わせし、世界と自分の距離をしっかりと確認して帰国した。

 「課題はスタンド。海外に出れば自分は体が小さいので(グラウンドに入る前の)スタンドで相手の体力を奪う必要性を感じた。海外遠征の後は、そこにポイントを絞って練習した。今大会ではスタンドで押し負けることがなく、ある程度成果は出たのではないかと思う」
(右写真=決勝で闘う岡本)。世界選手権の大舞台は初めての経験だが、その視線は既に世界の強豪に向けられている

■笹本、藤村の出てくる全日本選手権の優勝こそ真の日本一

 そんな岡本の意識の高さ、気持ちの強さに、苦楽を共にした拓大の須藤元気監督も驚きを隠さない。「昨シーズン、拓大が団体戦三冠を獲得できたのは、岡本がキャプテンとしてチームを締めてくれたことが大きい。自分に対しても厳しい選手だし、気の強さは私がプロ・アマを通じて見た選手の中でナンバーワンでしょう」。
(下写真=決勝で2度さく裂した豪快なバック投げ)





 心身ともに充実の時を迎え、満を持して挑む世界選手権では、五輪出場枠の獲得が大いに期待される。ただし、そこをうまく乗り越えたとしても、待っているのは国内の激しい代表争いだ。全日本選抜選手権で圧倒的な力を見せて初優勝したとはいえ、今大会はオリンピアンの笹本、アジア大会銅メダルの藤村義(自衛隊)が欠場していたのは事実。ライバルたちは12月の全日本選手権に照準を合わせ、岡本に襲い掛かってくるのは間違いない。

「全日本選手権で勝ってチャンピオンと呼ばれるようになりたい」−。ライバルたちを突き放し、自分は第一人者となる─。社会人1年目のシーズンを迎えた岡本の顔には、そんな強い決意が現れていた。

 

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