2011年明治杯全日本選抜選手権記事一覧


【特集】明治杯全日本選抜選手権・男子フリースタイル55&60kg級・湯元進一(自衛隊)&健一(ALSOK)
【2011年5月3日】


(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)



 明治杯全日本選抜選手権のフリースタイル55s級・60s級は湯元進一(自衛隊)と健一(ALSOK)がの双子兄弟がそろって世界選手権出場を決めた。昨年、松本隆太郎・篤史の兄弟が同時出場を果たしているが、双子兄弟の同時出場は日本初となる。(右写真=左が進一、右が健一)

■初戦で敗れながらもプレーオフで代表決めた弟・進一

 昨年12月の全日本選手権では兄弟Vを達成し、今大会でも第1シードにそろって名を連ねた両選手。しかし、日本のお家芸でもあるフリースタイル軽量級は層が厚く、55s級の弟・進一は初戦(2回戦)で富岡直希(NEWS DERI)に黒星。すんなりと世界選手権への道は決まらなかった。

 湯元進は海外でめっぽう強い。2009年に初出場した世界選手権こそメダルは獲得していないが、この2年間でゴールデンGP決勝大会など複数の国際大会で優勝。海外成績は、2008年北京五輪銅メダリストの兄・健一以上だ。圧巻は、昨年のアジア選手権(インド)で2009年世界王者を倒して優勝を遂げたこと。国内を勝ち抜けば世界一、という状況だっただけに初戦黒星は痛恨の極みだ。

 敗因は気持ち。拓大時代の恩師・西口茂樹部長から「大事に試合を進めすぎている」と指摘された。王者の立場からチャレンジャー精神が欠落していたのだろうか、富岡のがむしゃらな攻めを受けに回って失点してしまったが、プレーオフまでに気持ちを整理する時間は十分。「とにかくすぐに気持ちを切り替えようとした」と、自衛隊の伊藤広道監督のアドバイスで会場の外に出て初戦黒星の悪夢を振りはらった。

 プレーオフの前に行われた各階級の決勝戦で、兄・健一が早々に世界選手権出場を決めた。「悔しかったです」(進一)。北京五輪もそうだが、常に一歩先をゆく健一に対して、ライバル心むき出し。そこにはもう、守りに入る進一はいなかった。

 プレーオフは、昨年世界&アジア3位の稲葉泰弘(警視庁)との対決。「クリンチは避けたい」と攻めた湯元進は、第2ピリオド序盤にテークダウンを奪うと、連続ローリングでテクニカルフォールと快勝した
(左写真)。国際戦で安定した結果を残しているが、「五輪前年の世界選手権はレベルが違う」ときっぱり。気を引き締めて2度目の世界選手権出場に挑む。

■兄・健一はパワーレスリングで圧巻V

 北京五輪で銀メダルを獲得してから3年。健一は腰の手術などで一時休養しながら、一昨年末から本格的に復帰を果たした。五輪選手としての輝きが曇ることはない。初戦の鈴木康寛(拓大)にタックルで1点を失ったが、「つかまえたら僕は勝てます」というように、最後は力でねじ伏せてフォール。自分のレスリングを思う存分に展開した。

 準決勝からは、さらに気合が入る。初戦で弟・進一が敗退し、プレーオフ進出が決まってしまった。「僕がしっかり勝って、進一を励まさなければいけないと思った」と、試合を通じてでエールを送り続けた。

 決勝戦の相手は、66kg級世界学生王者の石田智嗣(早大)。昨年アジア大会銀メダルの小田裕之(国士舘ク)や、2006年世界3位の高塚紀行(自衛隊)を破って勝ち上がってきた。懐が大きく、長い手を生かした鉄壁のディフェンスが持ち前の選手だ。第1ピリオドはクリンチにもつれてしまった。それを取った湯元健は「取りづらい選手なんですが、そこを取っていかないといけない」と、第2ピリオドは前に前にとプレッシャーをかけていき、5−0と大差で優勝を決めた
(右写真)

 「北京五輪のときと同じように、前年の世界選手権に出場できるのでうれしい」とホッとした表情を見せたが、その直後に「(大会が)終わったと同時に、(五輪への挑戦が)始まったな」と気を引き締めた。前回は、最終予選で出場権を獲得し、その後に全日本王者の高塚紀行らとの闘いを制して五輪代表を決め、苦労した道だった。2度目の五輪は「前年の世界選手権でメダルを取って(出場権を獲得する)」と意気込みを語った。

 

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