2011年全日本チーム記事一覧


【特集】レスリング挑戦迫る! ロンドン五輪への思いをぶつける総合格闘家、泉浩(プレシオス)
【2011年6月27日】


(文・撮影=樋口郁夫)



 来年のロンドン五輪出場を目指して7月2〜3日の全日本社会人選手権(埼玉・和光市総合体育館=フリースタイルは2日)の男子フリースタイル96kg級にエントリーした総合格闘家の泉浩(プレシオス=2004年アテネ五輪柔道銀メダル、2005年世界選手権優勝)が、6月25日に終了した男子の全日本合宿に参加。全日本レベルの選手を相手に実力アップをはかった(右写真)

 同選手権で3位以内に入ると全日本選手権の出場資格を手にできる(注=今年の大会要項は発表されていたいため、これまでの慣例による)

 7月16日には「DREAM」(東京・有明コロシアム)で総合格闘家としての試合があり、しかもライトヘビー級王座挑戦というビッグマッチ。その直前のレスリング挑戦となる。実は、デビュー戦からファイトしていたSRCが消滅することになり、昨年大みそか以来、半年以上も試合から遠ざかっていた。

 ここは総合の試合に備えて“本職”の練習に専念したいところだろうが、安生洋二マネジャーは「全日本選手権の出場資格を取るためには(全日本社会人選手権を)パスするわけにはいかない」と説明し、泉のロンドン五輪出場へかける熱い思いを代弁。「全日本トップレベルの選手とのレスリング練習は、総合の実力アップにもつながる」と話し、ハードスケジュールという感覚は持っていない。

 泉自身も「常にチャレンジャーですから」と話し、試合が続くことに対して特別な意識はない。試合ができなかったうっぷんをレスリング挑戦でぶつけ、「新たなエネルギーをもらって総合の試合に挑みたい」と言う。
(左写真=柔道技を松本篤史選手に仕掛けた泉)

■いろんな技に挑戦し、失敗しながら身につけていく

 合宿の最終日には、昨年の世界選手権フリースタイル84kg級代表の松本篤史(ALSOK)や同級の昨年の学生二冠王者の鈴木聖二(専大コーチ)らと積極的なスパーリングを慣行。足払いといった柔道技のみならず、タックルや引き落としてバックに回るなどレスリングの技にも挑み、後方へ投げるがぶり返しにも挑戦している
(右下写真)。泉は「いろんな技に挑戦し、失敗し、その中から身につけていきたい」と話し、失敗を繰り返しながらも表情は明るい。

 昨年夏にレスリングでの五輪挑戦を決意。専大や警視庁での練習を経て全本チームの練習に加わった。その後、日体大や早大でも定期的に練習してきた。正面タックルなどの動きにはかなり慣れてきて、バックステップして防御できるが、片脚を取られた時にはなかなか踏ん張れない。これも徐々に慣れてきているようで、「いろいろと学んでいます」と言う。

 柔道は5分スルー、総合は1ピリオド5分か場合によっては10分で、通算15分が試合時間。レスリングは1ピリオドが2分で3ピリオド制。ひとまずの勝敗をつける時間はそれらよりも短い。それでも、「長い!」というのが現在の感覚。時間が短い分、爆発的な力による攻防が休むことなく続くので、そのあたりの感覚がまだ慣れないようだ。

 もっとも、柔道で世界王者に輝くだけの体力は大きな武器。2分間の攻防では、駆け引きで戸惑うことはあっても、“息があがる”ということはないという。「試合で第3ピリオドまでいった時にはどうなるか分かりませんけどね」と話しながらも、数多くの練習をこなせるだけの体力があるのは、レスリング挑戦でも大きな武器となりそうだ。

 ロンドン五輪挑戦へつながる闘いまで、あと1週間。「あとは調整?」という問いに、「いえ、まだ追い込んでいきます」と気合を入れた。



泉浩(いずみ・ひろし)
 1982年6月2日、青森県生まれ、29歳。小学生時代から柔道を始め、高校時代はインターハイ、全日本ジュニア体重別選手権で優勝。明大へ進んで全日本選抜体重別、ユニバーシアードでも優勝し、2004年アテネ五輪90kgで銀メダルを獲得。翌2005年に世界選手権で優勝。2008年北京五輪にも出場。その後、総合格闘技へ。デビュー戦は敗れたが、その後4連勝中。173cm。

 

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