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【特集】社会人3連覇で「自信になった」藤本浩平(警視庁)、次の目標は「日本一」
【2011年7月3日】


(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)



 全日本社会人選手権の男子フリースタイル66s級は、藤本浩平(警視庁=右写真)が決勝で2009年アジア選手権代表の佐藤吏(千葉読売広告)の2−1で破り、3年連続優勝を達成した。

 互いにローシングルを取り合う大接戦を制しての3連覇を飾り、男子の最優秀選手に選ばれた。藤本が「過去3年間のうち、一番厳しいトーナメントだった」と話すとおり、今年の66s級には強豪が勢ぞろい。決勝の佐藤以外にも、3回戦で2009年60s級世界5位の前田翔吾(ニューギン)、準決勝では拓大の後輩で昨年世界学生選手権60s級優勝の内村勇太(前川製作所)がいた。それらの強豪を破っての3連覇に「少し自信になりました」と笑みを見せた。

■2005年天皇杯の決勝カードが再現

 いばらのトーナメントを勝ち抜いた藤本のハイライトは、やはり決勝だ。佐藤との対決には苦い思い出がある。2005年の全日本選手権の決勝の舞台で2人は対戦。第1ピリオドを取った藤本は、第2ピリオドもリードを奪っていたが、ラスト1秒でがぶり返しを受けて逆転され、3ピリオドでは流れを失ってフォール負けを喫した。

 「あの時は優勝したかったですけど、大学2年で、まだ全日本王者の実力が備わっていなかった。全日本王者になっていたら、その後、(結果が出なくて)辛かったかもしれません」と、タイトルを落としたことに執着はしていない。ただ、ラスト1秒からリズムを崩されて試合に負けたことは、藤本にとっていい薬になった。「リードしていても、決して気を抜いてはいけない」と常に自身に言い聞かせて試合に臨むようにした。

 2007年の秋田国体で優勝し、社会人選手権はV3と実力は全国トップレベル。だが、近年の全日本選手権や全日本選抜選手権では準決勝で敗れて3位どまりの成績だ。「米満(達弘)と小島(豪臣)さんにいつも負けてしまいます」と、ツートップの壁を乗り越えられない。

■長所でもあり短所…相手ありきのレスリング

 藤本は課題にレスリング・スタイルを挙げる。「米満はハイクラッチが得意で、小島さんは差しからの片足タックルと、代名詞の技がありますが、僕にはこれといった技がないんです。本当は、両足タックルを決め技として試合を組み立てたいのですが…」。

 3回戦の前田が組み手を駆使してきた時は、組み手で応戦。決勝の相手の佐藤はローシングルが武器であり、構えが低く両足タックルに入り込むスペースがなかった。そのため、対抗して藤本も低い片足タックルで突破口を開いて試合を優位に進めた。「相手に合わせて、それでも勝てる」ことは一つの武器だが、相手に合わせたことで攻撃が後手になって負けることもしばしば。「やはり自分のスタイルを作り上げたい」と目標を掲げた。

 「今年の世界代表は米満です。米満が世界選手権でどんな結果であれ、自分が今、しなくてはいけないことをしていれば、ロンドン五輪へのチャンスが来たときに、その努力が生かされると思う」。

 ロンドン五輪まであと1年。五輪へかける藤本の気持ちは折れていない。社会人三連覇をステップに今年12月で全日本初制覇を狙う。

 

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