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【特集】倉本一真(自衛隊)が2年連続MVP! 「同門の先輩との決勝戦で力もらった」
【2011年7月4日】


(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)



 全日本社会人選手権の男子グレコローマン60s級は倉本一真(自衛隊)が2連覇を達成した。さらに、2年連続大会MVPのコールがされると、「よしっ」と小さくガッツポーズを作って、安堵の表情を浮かべた。(右写真=MVPを受賞。左は日本社会人連盟・早坂孝会長)

 4月下旬に全日本選抜選手権があり、1ヶ月も間を置かずに5月中旬にはウズベキスタンでのアジア選手権で4試合を闘って5位と奮闘。連続で減量に臨んでいたため、今回は本来の階級よりあげて66kg級で出場した。3回戦の井上智裕(兵庫・育英高)相手に2−1と1ピリオドを落とすこともあったが、一つのヤマであった準決勝の城戸義貴(自衛隊)戦できっちりストレートで勝ち、「一度負けた相手でしたが、しっかりリベンジできました」と自分の課題を一つずつクリアしていった。

 決勝戦は「中学、高校の同門」の北岡秀王(滋賀・日野高教)と対決。北岡は日体大出身で、2008年ジア選手権(韓国)銅メダルの経歴を持つ。2年前に企業クラブを辞めて地元の滋賀に帰ったが、動きは衰えておらず、倉本が「すごく強かった」とうなるほど。第1ピリオドは、日野高で培ったスタンドでの壮絶な組み手バトルが繰り広げられた。グラウンドでは倉本が“職業レスラー”の差を見せ、リフト技で3点をもぎとったが
(左下写真)、スタンドではまったくの五分だった。

 第2ピリオドは、「今日の北岡さんはがぶり返しがさえていたので、それにかからないように」と、注意しながら場外ポイントで1点を奪ってリード。北岡のラストの反撃を抑えてストレートで勝負を決めた。

 北岡は手ごわい先輩だった。だが、それ以上に「同門で大好きな先輩だし、仲のいい友達」の存在。同階級にも関わらず、北岡は倉本に「隆太郎(松本=昨年の世界2位)に勝てるのはお前だよ」とエールを送ってくれる大切な存在だ。「今日の決勝でやる気がまた出てきた」と、北岡のエールを力に変えて、12月の全日本選手権で日本の頂点を狙う。

■国内2番手の倉本の二つの課題

 男子60s級の勢力図は、昨年世界2位の松本隆太郎(群馬ヤクルト販売)が頭一つリードしている状況で、その松本を負う一番手が倉本だ。器用で、スタンド、グラウンドともに得点能力が高く、高評価を受ける反面、この1、2年で浮き彫りになっている課題がある。それは「リードしているときのラスト数秒のディフェンス」だ。

 昨年の千葉国体の決勝、世界選手権55s級代表の長谷川恒平(福一漁業)との一戦も、残り数秒で逆転負け。5月のアジア選手権の2回戦では、グラウンドで豪快な俵投げで3点を奪ったが、その直後にがぶり返しからフォール負け。3位決定戦では元世界王者のディルショド・アリポフ(ウズベキスタン)からスタンド残り数秒まで勝っていたにもかかわらず、そこから倒されてしまってフォール負けでメダルを逃した。
(右写真=アジア選手権でアリポフを攻めた倉本、撮影=増渕由気子)

 いずれも、倉本がテクニカルポイントを取って試合を優位にすすめているにも関わらずの状況だった。倉本も「自分の課題は何なのか分かっています」と自身の弱点に真正面から向き合っている。

 今大会もその悪いくせが出てしまった。決勝の第2ピリオド、最後の最後に北岡の技に体が浮いてバックポイントを取られそうになった。自分がリードしたら、相手は取り返すために攻めに来る。そこで、相手に攻めるすきを与えないレスリングをすることが倉本の理想のスタイルのようだ。

 アリポフ戦では足を踏まれるという反則でコケてしまったが、「下がって足を踏まれた自分が悪かった」と言い訳にせず、リード後の試合組み立てを研究している。ポイントは二つ。「集中力を切らさないこと、守りに入らないこと」。これができれば、12月の“隆太郎超え”も夢ではない。

 

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