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【特集】世界選手権へかける(1)…男子グレコローマン66kg級・岡本佑士(警視庁)
【2011年8月9日】


(文=保高幸子)



 「やっと出られます。世界選手権に出ることを目標にしてきたので、そんな気持ちです」−。世界選手権初出場、男子グレコローマン66kg級の岡本佑士(警視庁=右写真)の率直な言葉だ。一方で、「今回は五輪出場の資格もかかっているので、責任があると思います」とも口にし、日本代表の自覚は十分。

 昨年5月の全日本選抜選手権では初戦敗退(ベスト8)という不本意な成績に終わり、若手成長株の躍進にかげりが見えかけた。しかし、秋の国体と全日本選手権では、日本のグレコローマンを長年に渡って引っ張ってきた笹本睦(ALSOK)をともに下したうえでの優勝。今年5月の全日本選抜選手権は、笹本や昨年アジア大会銅メダルの藤村義(自衛隊)不在のトーナメントだったものの、決勝で大技を決めるなど圧倒的強さで勝ち、ただ者ではない存在感を見せた。

■世界選手権初出場だが、外国選手との対戦は豊富

 世界選手権の代表に決まってから特に練習を変えたということはないが、「こうしたらいいんじゃないか、ということは前よりも感覚がわかってきました。自分の形ができてきたかなと思います」と言う。得意のリフト技からローリングにつなげるなど、連続でポイントを狙っていくのが岡本のレスリング。「世界選手権でも全試合でリフト技を使っていきたい」と話す。ここ1年間、国内主要大会すべてで初優勝を成し遂げ、自信にあふれている。やりたいレスリングがあるのは強みだ。
(左写真=昨年12月、決勝で笹本を破って全日本王者へ)

 まだ世界選手権初出場の喜びが大きい岡本。「世界選手権で五輪の出場資格が取れれば、と思っていますが、正直に言って、五輪のことまではまだ考えられないのです」と言うのも当然。しかし、ここ2年間の国際大会や海外武者修行で海外の選手との闘いは未知数ではない。

 昨年はロシア、その前はアゼルバイジャンなどで数週間練習し、今年冬は米国での合宿に参加。その後、ハンガリーカップに出場し、チームが帰国してもひとり残り、現地での合宿に参加した。ハンガリーでは同国の代表とも練習し、何ヶ国かの選手と練習試合もした。

 「その中で感じたことですが、よく言われているように(外国選手は)パワーや瞬発力もありますが、技術が高い。自分も技術や体力を高めた方がいいなと思いました。例えば、スタンドで攻める技がなかったので、1ポイントとる技ですね。相手に良い形を作らせないというか。フリースタイルを長い間やっていたので、それをまじえた動きを武器にしていきたいなと思っています」

 高校時代にフリースタイルで実績を残しただけに、岡本の武器はリフト技だけではない。海外では子供の頃からグレコローマンをやっている選手が多いので、岡本の“フリースタイル作戦”は功を奏すかもしれない。「攻めていれば攻められることはないですから、最大のディフェンスですね」と、基本は攻撃し続けることだ。

■国内の強敵を撃破するためにも大切な世界選手権

 この春委、警察学校に入校した岡本は、全日本合宿などで授業を欠席しなければならないことが悩みでもあるが、その明るい人柄で同級生からの応援は熱い。要点をまとめたノートを渡してくれる同期生たちに返礼をするには、世界選手権で五輪出場枠を取ることが一番だ。
(右写真=全日本合宿で練習する岡本)

 今年の世界選手権は、両スタイルとも軽量級にメダルを期待する声が強く、初出場の岡本に対して「必ずメダルを取ってくれる」という声は高くはない。それでも、その勢いや伸びしろには誰もが期待しているはず。あと1ヶ月に迫った世界選手権までに、どこまで自分のレスリングを伸ばせるか。

 メダルを取ったとしても、その後には全日本選手権が続く。ケガから復帰してくるであろう藤村や笹本、そして清水博之(自衛隊)といった強敵が牙をむいて待っている。今回の世界選手権は、来年のロンドン五輪で最大の輝きを放つためのきっかけとなる大会であり、大事な舞台。勢いがある岡本がイスタンブールで自身の史上最高のレスリングをすることが、五輪への一番の近道だ。



 
岡本佑士(おかもと・ゆうじ=警視庁)
 1988年9月19日、静岡県生まれ、22歳。静岡・飛龍高〜拓大卒。高校時代の06年に四冠王(全国高校選抜大会。インターハイ、全国高校生グレコローマン選手権、国体)で優勝。拓大に進み、07年JOC杯ジュニアオリンピックで優勝し、世界ジュニア選手権5位。08年から全日本大学グレコローマン選手権を3連覇。10年は全日本学生選手権グレコローマン、両スタイルの全日本大学選手権、国体を制し、全日本選手権も初優勝。



 ◎岡本佑士の最近の国際大会成績


 《2011年》

 
【3月:ハンガリーカップ】18位(25選手出場)
1回戦 ●[0−2(0-1,0-2)]Vasif Arzimanov(トルコ)

 
【2月:ニコラ・ペトロフ国際大会】5位(24選手出場)
3決戦 ●[1−2(0-1,2-0,0-2)]Anton Mamageishvili(グルジア)
敗復戦 ◯[2−1(1-2,4-0,5-1)]Strebel Pascal(スイス)
敗復戦 ◯[2−0(3-0,1-0)]Serir Mohamed(アルジェリア)
1回戦 ●[1−2(0-5,0-2,2-3)]Carpen Georgian(ルーマニア)

 
【2月:デーブ・シュルツ国際大会】2位(21選手出場)
決  勝 ●[フォール、2P0:40(TF7-1,F)]Justin Lester(米国)
準決勝 ○[2−1(0-2,2-1,1-0)]Sharur Vardanyan(スウェーデン)
3回戦  ○[フォール、2P1:06(2-0,F)]Marius Thommesen(ノルウェー)
2回戦  ○[2−0(TF7-0,TF8-0)]Riccardo Magni(イタリア)
1回戦  ○[2−0(1-0,TF6-0)]Kerry Regner(米国)

 
【1月:キキ・カップ(米国・コロラドスプリングズ)】
4回戦 ○[1−0(1-0,1-0)]Ben Sanchez(米国=ミシガン・ジュニア)
3回戦 ●[1−2(0-1,1-0,0-1)]C.P. Schlatter(米国=サンキスト)
2回戦 ●[0−2(0-2,0-1)]Harry Lester(米国=NYAC)
1回戦 ○[2−1(0-2,5-0,2-0)]Glenn Garrison(米国=海軍)

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 《2010》
 【10月:世界学生選手権(イタリア・トリノ)】10位(18選手出場)
1回戦 ●[1−2(0-2,2-0,0-2)]Denisov Yuri(ロシア)

 
【7月:ゴールデンGP決勝大会】5位(19選手出場)
3決戦  ●[0−2(0-1,0-2)]Mikhail Semenov(ベラルーシ)  
敗復戦 ○[2−0(2-0,1-0)]Tamas Loerincz(ハンガリー)  
2回戦  ●[0−2(0-4,0-1)]Rustam Aliyev(アゼルバイジャン) 
1回戦   BYE

 
【3月:ハンガリーカップ(ハンガリー・ソンバトヘイ)】10位(32選手出場)
敗復戦 ●[0−2(0-1,0-4)]Sergiy Krasilnikov(ウクライナ)
敗復戦 ○[2−0(4-0,4-0)]Kerry Regner(米国)
2回戦  ●[0−2(0-1,0-5)]Mikhail Semenov(ベラルーシ)
1回戦  ○[2−0(1-0,4-2)]Matt Holt(米国)

 
【2月:ニコラ・ペトロフ国際大会(ブルガリア・ブルガス)】3位(12選手出場)
3決戦  ○[2−0(1-0,6-0)]Ilhan Myumyunov(ブルガリア)
準決勝 ●[0−2(0-5,2-8)]Emil Milev(ブルガリア)
2回戦  ○[2−0(1-0,0-3,2-0)]Emin Ahmadov(アゼルバイジャン)
1回戦  BYE

 
【2月:デーブ・シュルツ国際大会(米国・コロラドスプリングズ)】(18選手出場)
敗復戦 ●[1−2(0-1,3-3,0-2)]Rovshan Odilov(ウズベキスタン)
敗復戦 ○[2−0(1-0,2-0)]Joshua Castellano(米国)
3回戦 ●[0−2(0-1,0-3)]Faruk Sahin(米国)
2回戦 ○[フォール、3P1:24(2-0,1-2、F)] ? (米国)
1回戦 ○[2−0(1-0,6-0)]Matt Holt(米国)

 

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