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【特集】世界選手権へかける(4)…男子フリースタイル96kg級・磯川孝生(徳山大職)
【2011年8月16日】


(文=保高幸子)



 昨年の世界選手権で強豪国(ブルガリア)から1勝を挙げ、勢いに乗って11月の広州アジア大会では銅メダルを獲得。日本重量級の意地を見せつけた男子フリースタイル96kg級の磯川孝生(徳山大職=右写真)。現在全日本のコーチであり2006年アジア大会で派遣をカットされて悔しい思いをした先輩の小平清貴コーチ(警視庁)の分まで奮起し、自分の持つ力を全て出し切って勝ち取ったメダル。今年の世界選手権では、重量級の中で今一番期待がかかる選手といえるだろう。

 アジア大会で銅メダルを取ったことは、磯川の自信になっただけではない。「メダルを取ったことはうれしかったけど、それは置いておきます。今回は五輪出場枠がかかった大事な大会です。五輪の切符をとるための明確なプランが見えてきました」と話し、対世界の意識の変革に一役買った。

■アジア大会の銅メダルで、やってきた練習が正しかったことを確信

 「メダルを取るまでは、一生懸命練習はしていましたが、正直なところ五輪は見えていなかったと思います」と、世界で闘うプランが見えていなかった。今は、「世界でどう勝ち抜くか」と、世界で上を目指す意識がついた。「今までやってきたことが間違いじゃなかった、と思えたのはアジア大会のメダル獲得がきっかけ。ということは、もっと頑張れば…」と、五輪出場の感覚をつかめた。

 アジア大会で獲得したメダルだけでなく、今まで獲ったメダルなどは全て実家に置いてあるという。「手元においておくと、それ以上行けないような気がして…。今まで色んな人に迷惑をかけながらレスリングをやっているので、現状で満足してしまったら誰も喜ばないです。(徳山大の)学生を残して合宿などに出ていることが、上にいきたいというモチベーションになります」。支えてくれる人たちのためにも、さらに上、夢の世界だった五輪の舞台に立つことを目指す。
(左写真=アジア大会の3位決定戦で闘う磯川)

 これまでは、重量級にはメダルの期待がそれほどかからなかった。アジア大会のメダル獲得で少し変わってきた。「重量級はきついことをやってきている自信があるし、84kg級以上はグレコもフリーも切磋琢磨してやってきているので、必ず結果を出せると信じています。スタイルに関係なく頑張っていかないといけないです」と意欲満々。他の重量級の選手達に与える影響も大きいだろう。

 今年は重量級合宿はなかったものの、通常の合宿が多く、昨年と同じように追い込むことができている。体力データも、練習をやってきただけの結果がついてきている。あとはイスタンブールでの本番を待つだけだ。

■加藤賢三(グレコ96kg級)が輝いた4年前の世界選手権の再現なるか

 アジア大会後に磯川が考えたのは、「自分の持っている体力、レスリングをどれだけ向上できるか」だ。やってきている練習が正しいと思えたからこそ、新しいことにチャレンジするのではなく、体力の向上こそが世界で勝つ道につながるとはっきり見えた。

 「積極的に行くレスリングを2分3ピリオド続けられれば勝てる−。トーナメントで結果を出せるようには、試合数をこなす体力も必要。できるだけ体力をつけていきたいです」。昨年磯川が見せた、自分が試合をコントロールするレスリングをさらに向上させれば、世界で勝つことは夢ではない。
(右写真=全日本合宿で小平コーチの指導を受ける)

 今は五輪の結果までは考えていない。まず出場枠を取りに行く。一昨年は1勝をあげ、昨年の世界選手権ではさらに強豪国からの1勝を勝ち取った。その勢いに乗ってアジア大会での銅メダル。間違いなく一歩一歩着実に進んできた磯川は、この世界選手権での目標は五輪出場枠である5位以内。

 2007年世界選手権で男子グレコローマン96kg級の加藤賢三(自衛隊)が5位入賞し、北京五輪の枠を獲得したことは記憶に新しい。あれから4年。また日本重量級の実力を見せる時が来た。その旗頭が磯川であることは間違いない。磯川がマットの上で勝利の雄叫びをあげる姿を、誰もが待っている。



 
磯川孝性(いそかわ・たかお=徳山大職)
 1984年6月10日、熊本県生まれ、27歳。大分・日本文理大付高〜拓大卒。少年時代から全国に名をとどろかせており、高校時代の01年にはインターハイなどで優勝。02年には全国4大大会を制覇。さらにアジア・ジュニア選手権4位、全日本選手権3位と力をつけた。拓大2年の04年は全日本選手権84kg級で初優勝し、05年はアジア選手権2位へ。07年から96kg級へ上げ、同年の全日本選手権2位となったが、翌年の北京五輪は逃す。09年に全日本選抜選手権で勝ち、世界選手権に初出場。同年の全日本選手権優勝を経て、09年のアジア選手権・アジア大会でともに銅メダルを獲得した。176cm。



 ◎磯川孝生の最近の国際大会成績


 《2011年》

 
【2月:デーブ・シュルツ国際大会(米国)】(12選手出場)
敗復戦 ●[0−2(0-3,0-1)]Israel Silva(メキシコ)
敗復戦 ○[2−1(0-1,3-2,3-3)]Gregore Canali(モルドバ)
2回戦 ●[0−2(0-2,TF0-7)]Ivan Yankouski(ベラルーシ)
1回戦 ○[2−0(1-0,TF6-0)]De`Andre Nunn(米国)

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《2010年》
 【11月:アジア大会(中国)】
3位(12選手出場)
3決戦 ○[2−0(3-0,1-0)]Farkhod Anakulov(タジギスタン)
準決勝 ●[0−2(0-4,0-1)]Kurban kurbanov(ウズベキスタン)
2回戦 ○[2−0(2-0,2-0)]Faisal Al Ketbi(UAE)
1回戦  BYE

 
【9月:世界選手権(デンマーク)】17位(33選手出場)
3回戦 ●[0−2(0-1,0-4)]Serhat Balci(トルコ)
2回戦 ○[2−0(3-0,1-0)]Lyuben Borisov Iliev(ブルガリア)
1回戦  BYE

 
【5月:アジア選手権(インド)】3位(14選手出場)
3決戦 ○[2−0(2-1,1-0)]Kushu Bekbolsun(キルギス)
敗復戦 ○[2−0(5-0,TF6-0)]Lo Tien-yu(台湾)
2回戦 ●[0−2(0-2,1-4)]Reza mohammad ali Yazdani(イラン)
1回戦 ○[2−1(1-0,0-1,1-0)]Nam Kwang Il(北朝鮮)

 
【2月:デーブ・シュルツ国際大会(米国)】(13選手出場)
敗復戦 ●[0−2(0-2,0-2)]Eliot Kelly(米国)
2回戦 ●[0−2(0-1,0-3)]Pat Cummins(米国)
1回戦 ○[棄権]Korey Jarvis(カナダ)

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《2009年》
 
【9月:世界選手権(デンマーク)】14位(29選手出場)
2回戦 ●[0−2(0-1,0-1)]Jake Varner(米国)
1回戦 ○[2−0(2-0,1-0)]Diego Rodrigues(ブラジル)

 

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