【特集】2012年ロンドン五輪へ向けて、新スター誕生なるか!?
【2010年12月19日】



(文=増渕由気子)



  12月21日に開幕する天皇杯全日本選手権(東京・代々木競技場第2体育館)で、事実上、2010年ロンドン五輪の日本代表選考がスタートする。本ホームページで「名勝負数え歌」としてライバル関係を特集してきたが、カデット(16〜17歳)やジュニア(18〜20歳)の若手選手の活躍も期待されるのが、今年の全日本選手権だ。

 過去、日本最年少の五輪代表は1968年メキシコ五輪の両スタイル・ヘビー級に高校3年生で出場した磯貝頼秀(千葉・習志野高。10代での五輪出場で記憶に新しいのは、19歳で1984年ロサンゼルス五輪に出場した赤石光生だ。女子は現63s級世界女王の伊調馨が2004年アテネ五輪に中京女大2年で出場しており、これが最年少記録。2012年ロンドン五輪へ向けて、彗星のごとく現れる若手のスターは誕生するだろうか。

■高校3年で全日本王者に勝った森下史崇

 超高校級選手になると、全日本選手権での上位入賞も夢ではない。そのスター候補ナンバーワンが昨年、前年の全日本王者の湯元進一(自衛隊)を2回戦で破って3位に入賞した男子フリースタイル55s級の森下史崇(現日体大1年=
右写真。左下写真が湯元戦)だ。当時、森下は霞ヶ浦高校の3年生。2年でインターハイ王者に輝き、3年時には大学生が主戦場のJOCジュニアの部で優勝。アジア・ジュニア選手権2位、国体優勝などの成績を残し、昨年の高校生MVPにも選ばれた。

 森下は前回大会で現役全日本王者に勝ったことに意識はしていない。「勝った気分にならなかったです。冬に参加した全日本合宿で力の差を見せつけられましたから」と苦笑いしながら振り返る。さらに、日体大で北京五輪銀メダリストの松永共広(ALSOK)や社会人王者の守田泰弘(山口県協会)などと練習することで、トップ選手との差も痛感している。「高校生のときは、間違ったやりかたでも点数が取れていたが、日体大では、何も通じなかった」と、攻め方一つに対しても試行錯誤する毎日を送った。

 4月に日体大に進学したが、部は活動停止中。霞ヶ浦高でエースを張った時の森下は、個人戦と団体戦合わせて年間約60試合に出場し、場数を踏んだが、一転して今シーズンは9月の千葉国体が初試合。「試合感覚がなくなってきつかった」と話すように、本来の動きは見せられなかった。

 だが日体大進学は森下の長年の夢。練習には2008年北京銀・銅コンビの松永共広と湯元健一(ともにALSOK)をはじめ、全日本トップレベルの選手が数多くいる。その中で力をつけられたことは、実戦から遠ざかったことを帳消しにしてくれた。復帰2戦目となった11月末の東日本学生秋季新人戦では見事に優勝。フォールの体勢に持ち込まれるなど冷や汗をかくシーンもあり、試合から遠ざかった影響はぬぐえていなかったが、勝ち抜く感覚は取り戻せた。

 森下は来年19歳。赤石や伊調が五輪に飛び出した年となるが、階級が日本屈指の男子フリースタイル55s級だけに、一歩ずつ前進することが当面の目標だ。気負わずに3度目の全日本選手権へ挑む。

■ユース五輪金メダリストの高橋侑希は「ロンドン五輪選考に絡んでみたい」

 今シーズン、若手で一番の結果を残したのは、三重・いなべ総合高校2年生の高橋侑希だろう。今年からは始まったユース五輪(14〜18歳=レスリングは16〜17歳のカデット)の日本代表となり、金メダルを獲得。

 高校界でも2年生で高校三冠王者(全国高校選抜大会、インターハイ、国体)に輝き、インターハイは2年連続優勝という記録づくめのシーズンを送った
(右写真=国体で闘う高橋)

 国内外含めて無敗でシーズンを駆け抜けたことも大きい。国体優勝後に「ロンドン五輪選考に絡んでいきたい」と、2016年ではなく、直前の五輪から勝負をかけていくことを宣言した。

 

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