【特集】女子唯一の金メダルで3連覇達成…女子55s級・吉田沙保里(ALSOK)【2010年11月27日】


(文=増渕由気子、撮影=保高幸子)




 3階級制覇が期待されたアジア大会最終日は番狂わせが連続。決勝の舞台に駒を進め、下馬評どおりに優勝したのは、五輪2大会連続金メダルの55kg級・吉田沙保里(ALSOK)のみだった(右写真)

 五輪含めて世界V10、五輪2大会連続優勝など、“レコードコレクター”でもある吉田は、4試合を勝ち抜いて優勝。「4年に1度の大会なので(大会)3連覇ができてよかった」と、五輪3連覇へ向けてのステップだった今大会も強さをアピールした。

 だが、メンタル面での調整は難しい状況に追い込まれた。吉田自身が好調でも、「チームジャパン」が次々と敗退。試合前日には優勝候補筆頭の48kg級・坂本日登美(自衛隊)がまさかの3位。それをばん回しようと、最終日は3階級制覇を狙いにいった日本だが、63s級の西牧未央(至学館大大学院)は2回戦でフォール負け、72s級の浜口京子(ジャパンビバレッジ)も準決勝でフォールされてしまった。

■一人で金メダル獲得の期待を背負い、思わぬ緊張に襲われた

 日本の最後の砦(とりで)となってしまった吉田の決勝は、今年の59s級世界2位で地元中国の張蘭が相手。完全アウェーの中で始まった第1ピリオドは、張蘭とけんか四つで組み合い、相手は何度も得意の飛行機投げを出そうと、吉田の腕を捕まえようとした。

 だが、吉田も中国対策は万全。足を使ってタックルを連発し5−0と大差をつけた。だが、金メダルを1人で背負った吉田にも緊張が走り、「2ピリオド目は足にきていた」と吐露するほど、後半は思った以上に動けなかった。

 吉田自身に関しては連覇、連勝記録、無失点記録などレコードがすべて更新された。今大会の相手は「全員が初めての対戦」。その中でも、各選手に対して、それぞれの対応できたことが収穫だった
(右写真=決勝で攻める吉田)

 だが、日本勢として金1は過去最低。さらにメダルを逃した階級があることも初めてだ。吉田は「私から見ても、このままだと、ロンドン五輪で金が0ということになってしまうかもしれない」と危機感を募らせた。

 「(周囲から)吉田は楽勝だろ、とよく言われますが、勝負は勝つまで何があるか分からないから」。他の3階級で起きた現実を受け入れ、チームジャパンとして、自身も気を引き締めてロンドン五輪を目指す。

 

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